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この記事の要点
- ビタミンB6は単一物質の名称ではなく、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンと、それぞれのリン酸型を含む総称です。
- 体内では主にピリドキサール5'-リン酸(PLP)が補酵素として働き、アミノ酸代謝を中心に100を超える酵素反応に関わります。
- 18〜64歳の推奨量は、男性1.5mg/日、女性1.2mg/日です。妊婦・授乳婦には同年齢女性の推奨量への付加量があります。
- 『水溶性だから多く摂っても安全』とは限りません。複数のサプリ、プロテイン、栄養ドリンクなどを併用するときは1日量を合計します。
ビタミンB6とは
ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンと、それぞれの5'-リン酸型からなる水溶性ビタミンの総称です。体内で補酵素として中心的に働くのはピリドキサール5'-リン酸(PLP)とピリドキサミン5'-リン酸(PMP)です。食品中では複数の形で存在し、サプリメントでは安定性の高いピリドキシン塩酸塩や、PLPを成分名に持つ製品が流通しています。形が違っても、栄養表示で比較するときはビタミンB6としての量を確認します。
ビタミンB6の働き
PLPは、アミノ酸の分解・合成・変換を助ける補酵素です。さらに、グリコーゲンからエネルギーを取り出す反応、脂質代謝、ヘモグロビン合成、免疫機能、神経伝達物質の合成、ホモシステイン代謝などにも関わります。消費者庁が定める栄養機能表示では、たんぱく質からのエネルギー産生と、皮膚・粘膜の健康維持を助ける栄養素という範囲で機能を表示できます。これは栄養素としての一般的な機能であり、特定の症状や病気に対する治療効果を示す表示ではありません。

1日にどれくらい必要?日本人の推奨量と上限量
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、18〜29歳の推奨量は男性1.5mg/日、女性1.2mg/日、耐容上限量は男性55mg/日、女性45mg/日です。30〜64歳は推奨量が男性1.5mg/日、女性1.2mg/日、耐容上限量が男性60mg/日、女性45mg/日です。65〜74歳は男性1.4mg/日・女性1.2mg/日、上限量は男性55mg/日・女性45mg/日、75歳以上は男性1.4mg/日・女性1.2mg/日、上限量は男性50mg/日・女性40mg/日です。妊婦は同年齢女性の推奨量に0.2mg/日、授乳婦は0.3mg/日を加えます。耐容上限量は、ほとんどの人に健康障害が起こらないと考えられる習慣的摂取量の上限であり、目標量ではありません。

たんぱく質を多く摂ると必要量も増える?
ビタミンB6の必要量は、アミノ酸代謝との関係から、食事摂取基準でもたんぱく質の推奨量を用いて算定されています。ただし、プロテインを飲む人全員がビタミンB6サプリを追加すべきという意味ではありません。肉や魚などのたんぱく質源そのものにもビタミンB6が含まれ、ビタミンB6を添加したプロテインもあります。まず食事と利用中の製品表示を合計し、不足の根拠がないまま高用量を重ねないことが基本です。
ビタミンB6を多く含む食品
ビタミンB6は、かつお、まぐろ、さけなどの魚、鶏肉やレバーなどの肉類、じゃがいもなどのでんぷん質の野菜、バナナなどに含まれます。食品ごとの含有量は、種類、部位、調理状態、可食部量によって変わります。サプリメントの含有量だけでなく、日常的に食べる量を踏まえて考えることが大切です。具体的な数値を確認するときは、文部科学省の食品成分データベースで食品名と調理状態を指定し、可食部100g当たりの値を確認できます。
ビタミンB6が不足するとどうなる?
ビタミンB6だけが単独で不足することは一般に多くありませんが、重い不足では、小球性貧血、口角の亀裂、舌炎、皮膚炎、免疫機能の変化、抑うつや混乱などの神経症状が報告されています。腎機能障害、吸収不良、アルコール依存、自己免疫疾患の一部、特定の薬剤の使用では栄養状態が影響を受けることがあります。これらの症状はビタミンB6不足だけに特有ではないため、症状から自己判断して高用量サプリを始めるのではなく、医療機関で原因を確認します。
根拠資料: [5]
栄養機能食品の0.39〜10mgは、必要量や安全上限ではない
日本の栄養機能食品でビタミンB6の機能表示をするには、1日摂取目安量当たり0.39〜10mgの範囲に収まる必要があります。この数値は、定められた栄養機能表示を付けるための制度上の範囲です。0.39mgを摂れば誰でも十分、10mgまではどの商品を重ねても問題ない、という個人向けの判定値ではありません。必要量は年齢、性別、妊娠・授乳の有無で異なり、安全性は食品と複数製品からの総摂取量で考えます。
ピリドキシンとP5Pの違い
サプリメントで最もよく使われる形はピリドキシン塩酸塩です。P5P、PLP、ピリドキサール5'-リン酸と表示される形もあります。PLPは体内で補酵素として働く形ですが、経口摂取したリン酸型は消化管で処理された後に吸収されます。NIHの資料では、サプリメント由来の異なる形の吸収性に大きな差は示されていません。「活性型だから必ず吸収がよい」「P5Pなら高用量でも神経障害を起こさない」とは判断できません。どの形でも、ビタミンB6としての1日量と併用製品の合計を確認します。

ビタミンB6の表示形態を見分ける
名称の違いは、食品・サプリメント・医薬品という用途や、化合物の形を表します。優劣の表ではなく、ラベルを読むための整理です。
ビタミンB6(食品中)
- 分類
- 食品由来
- 主な役割
- 複数のB6化合物として摂取され、体内で補酵素型へ変換される
- 特徴
- 魚、肉、いも類、果物などに含まれる。通常の食品からの過剰による健康障害は報告されていない。
ピリドキシン塩酸塩
- 分類
- サプリメント/医薬品
- 主な役割
- 安定性の高いビタミンB6供給源
- 特徴
- サプリメントで広く使われ、医薬品の有効成分にもなる。1日量と使用目的を確認する。
P5P/PLP
- 分類
- サプリメント/医薬品
- 主な役割
- 体内で補酵素として働くピリドキサールのリン酸型
- 特徴
- 『活性型』と表示されることがあるが、高用量摂取の安全性を保証する名称ではない。
栄養機能食品のビタミンB6
- 分類
- 食品表示制度
- 主な役割
- 規格基準を満たす食品に定型の栄養機能を表示する
- 特徴
- 1日摂取目安量0.39〜10mgは表示要件。個人の推奨量や耐容上限量とは別の基準。
ビタミンB6製剤
- 分類
- 医薬品
- 主な役割
- 承認された効能・用法に基づいて使用する
- 特徴
- 食品の栄養補給と目的が異なる。添付文書や薬剤師・医師の指示を優先する。
過剰摂取と手足のしびれ・末梢神経障害
通常の食品に含まれるビタミンB6が健康障害を起こしたという報告はありません。一方、ピリドキシンを含むサプリメントなどを高用量で長期間摂ると、感覚性末梢神経障害を起こすことがあります。初期には手足のしびれ、ピリピリ・灼けるような感覚、感覚の鈍さとして現れ、進行すると歩行や細かな動作に影響することがあります。日本の耐容上限量も、感覚神経障害を根拠に設定されています。オーストラリアの安全性報告では、複数製品の併用例や50mg/日以下の報告もあり、発症する最小量や期間、個人の危険因子は確定していないとされています。これは海外の副作用報告であり発症率を示すデータではありませんが、重複摂取を避ける理由になります。
見落としやすい重複摂取
ビタミンB6は、B群サプリやマルチビタミンだけでなく、マグネシウム・亜鉛製品、美容系サプリ、栄養ドリンク、プロテインなどにも配合されることがあります。各製品では少量に見えても、1日摂取目安量を合計すると増えます。表示では①1日分の量、②「ビタミンB6」「ピリドキシン塩酸塩」「P5P」などの名称、③医薬品か食品か、④使用期間を確認します。手足のしびれや灼熱感が現れたら、ビタミンB6を含む製品を中止し、早めに医師または薬剤師へ相談してください。

利用上の注意: ビタミンB6を含むサプリメント、プロテイン、栄養ドリンク、医薬品を併用するときは、各製品の1日量を合計してください。手足のしびれ、ピリピリ感、灼熱感、感覚の鈍さが出た場合は使用を中止し、医師または薬剤師へ相談します。治療中、妊娠・授乳中、子ども、腎機能障害などの持病がある人は、自己判断で高用量を使用しないでください。
ビタミンB6のよくある質問
ビタミンB6にはどのような働きがありますか?
アミノ酸代謝を中心に、糖質・脂質代謝、神経伝達物質やヘモグロビンの合成、免疫機能などを助ける補酵素として働きます。摂れば摂るほど代謝や肌の状態が向上するという意味ではなく、必要量を満たすことが基本です。
ビタミンB6を多く含む食品は何ですか?
かつお・まぐろ・さけなどの魚、鶏肉やレバー、じゃがいもなどのでんぷん質の野菜、バナナなどに含まれます。含有量は食品の種類や調理状態、食べる量で変わります。
ビタミンB6は1日何mg必要ですか?
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、18〜64歳の推奨量は男性1.5mg/日、女性1.2mg/日です。妊婦は同年齢女性に0.2mg/日、授乳婦は0.3mg/日を加えます。年齢によって値が異なるため、該当する区分を確認してください。
水溶性ビタミンなら、余った分は排泄されるので安全ですか?
安全とは限りません。ビタミンB6は水溶性ですが、サプリメントなどから高用量を長期間摂ると感覚性末梢神経障害を起こすことがあります。複数製品からの1日量を合計してください。
ビタミンB6で手足がしびれることはありますか?
高用量のビタミンB6を継続した場合、しびれ、ピリピリ感、灼熱感、感覚の鈍さなどの末梢神経症状が起こることがあります。症状が出たら含有製品を中止し、早めに医療機関へ相談してください。
P5Pはピリドキシンより吸収がよく、安全ですか?
P5Pは体内で補酵素として働く形ですが、経口摂取したリン酸型は消化管で処理されます。公的資料ではサプリメント形態による吸収性の大きな差は示されておらず、P5Pなら高用量でも安全とはいえません。
プロテインを飲むならビタミンB6も追加した方がよいですか?
一律に追加する必要はありません。ビタミンB6の必要量はたんぱく質代謝と関係しますが、食品やビタミンB6添加プロテインからも摂取できます。食事と製品表示を確認してから判断します。
妊娠中のつわりにビタミンB6を使えますか?
妊娠中の推奨量には付加量がありますが、つわりに対する治療量とは別です。治療目的の用量やほかの薬との組み合わせを自己判断せず、産婦人科で相談してください。
栄養機能食品の上限10mgなら、毎日10mgまで安全ですか?
10mgは栄養機能表示を付ける食品の制度上の上限です。個人の必要量や、複数製品を含めた安全性を保証する数字ではありません。年齢・性別ごとの推奨量と耐容上限量、併用製品の合計を確認します。
参考文献
- [1]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2025年版)水溶性ビタミン
- [2]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2025年版)の概要
- [3]消費者庁:栄養機能食品について
- [4]消費者庁:栄養機能食品の表示事項・規格基準(2025年4月版)
- [5]NIH Office of Dietary Supplements:Vitamin B6 - Health Professional Fact Sheet
- [6]文部科学省:食品成分データベース
- [7]Therapeutic Goods Administration:Peripheral neuropathy with supplementary vitamin B6
- [8]PMDA:ピリドキシン塩酸塩錠30mg 医薬品情報
- [9]PMDA:ピリドキサールリン酸エステル水和物製剤 医薬品情報
医師監修

千葉大学病院所属
形成・美容外科
順天堂大学医学部卒
最終監修日: 2026.07.18