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脂質とは?1日の目標量、脂肪酸の種類と表示の見方を解説

主要栄養素

脂質は、脂肪酸を含む化合物の総称で、効率のよいエネルギー源、細胞膜の構成成分、脂溶性ビタミンの吸収を助ける成分として働きます。成人の総脂質の目標量は摂取エネルギーの20〜30%で、個人共通の固定gではありません。量だけでなく、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸へ置き換えるなど脂肪酸の構成、商品の表示分母、食事全体を分けて確認します。

みんなの成分表編集部

査読論文・公的資料・公式表示を基にした編集部解説・最終更新

この記事の要点

  • 脂質は1g当たり9kcalとして計算され、細胞膜の構成や脂溶性ビタミンA・D・E・K等の吸収にも関わります。
  • 2025年版食事摂取基準の成人目標量は、総脂質20〜30%エネルギー、飽和脂肪酸7%エネルギー以下です。
  • n-6系・n-3系には、体内で合成できない必須脂肪酸があります。親脂肪酸のリノール酸とα-リノレン酸は食事から摂る必要があります。
  • 脂質を減らすだけでなく、飽和脂肪酸を何に置き換えるかが重要です。総脂質gだけでは脂肪酸の質は分かりません。
  • 商品比較では、1食・100g・1包装などの分母と、推定値・範囲・0g表示を確認します。

脂質とは?脂肪・脂肪酸との違い

栄養学でいう脂質には、中性脂肪、リン脂質、糖脂質、ステロール等が含まれます。中性脂肪はグリセロールに3つの脂肪酸が結合した形で、食品や体内に多く存在します。脂肪酸は脂質を構成する部品で、炭素鎖の二重結合の有無や位置により、飽和脂肪酸、単価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸へ分類されます。「脂質」「体脂肪」「血中の中性脂肪」「脂肪酸」は関係しますが同じ言葉ではありません。

根拠資料: [1]

脂質の働きと1g当たり9kcal

脂肪酸は、たんぱく質や炭水化物より1g当たりのエネルギーが大きく、栄養計算では脂質1gを9kcalとして扱います。脂質はエネルギー源になるほか、細胞膜の構成、脂溶性ビタミンA・D・E・Kやカロテノイドの吸収にも関わります。一方、脂質全体を一つの必須栄養素とみなすのではなく、n-6系のリノール酸とn-3系のα-リノレン酸に必須性があります。機能があることは、必要量を超えて脂質を増やすほど健康効果が高まることを意味しません。

根拠資料: [1]

脂質、たんぱく質、炭水化物の1g当たりのエネルギー量を示す図

成人の目標量は20〜30%エネルギー:固定gではない

日本人の食事摂取基準(2025年版)は、18歳以上の男女、妊婦、授乳婦について、総脂質の目標量を摂取エネルギーの20〜30%としています。gへ換算する式は「1日のエネルギー量(kcal)×0.20〜0.30÷9」です。例えば2,000kcalなら約44〜67g、2,200kcalなら約49〜73gですが、これは計算例であって全員共通の目標gではありません。必要エネルギーは年齢、体格、身体活動、妊娠・授乳等で異なります。なお、栄養表示で使う栄養素等表示基準値の脂質70gは、2,200kcalを基準にした表示上の参照値で、個人の推奨量ではありません。

根拠資料: [1][6]

飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸・n-3系・n-6系の違い

飽和脂肪酸は二重結合を持たず、肉の脂身、乳製品、パーム油等に多く含まれます。不飽和脂肪酸は二重結合を持ち、オリーブ油等に多い単価不飽和脂肪酸と、植物油・魚等に多い多価不飽和脂肪酸に分かれます。多価不飽和脂肪酸のうち、n-6系にはリノール酸、n-3系にはα-リノレン酸、EPA、DHA等があります。同じ食品には複数種が共存するため、食品名だけで一種類の脂肪酸と決めつけません。

根拠資料: [1][2]

脂質と脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、n-3系、n-6系の分類を整理する図

脂質表示と代表的な脂肪酸の違い

「脂質g」は脂質全体の量です。脂肪酸の種類は役割や主な食品源、表示上の扱いが異なり、総脂質の数字だけでは内訳を判断できません。

総脂質

分類
栄養成分表示の義務項目
主な役割
食品に含まれる脂質全体の量を示す
特徴
gと食品単位をセットで読む。飽和・不飽和・トランス脂肪酸の内訳は総脂質値だけでは分からない。

飽和脂肪酸

分類
脂肪酸/推奨表示
主な役割
エネルギー源や脂質構成成分になる
特徴
成人目標量は7%エネルギー以下。肉の脂身、乳製品、パーム油等に比較的多い。置換先を含めて考える。

単価不飽和脂肪酸

分類
不飽和脂肪酸
主な役割
エネルギー源や脂質構成成分になる
特徴
オレイン酸等。オリーブ油、なたね油、ナッツ等に多い。2025年版では目標量を設定していない。

n-6系脂肪酸

分類
多価不飽和脂肪酸/任意表示
主な役割
必須脂肪酸として食事から摂る
特徴
リノール酸等。成人目安量は男性9〜12g、女性8〜9gで、年齢別に確認する。

n-3系脂肪酸

分類
多価不飽和脂肪酸/任意表示
主な役割
必須脂肪酸として食事から摂る
特徴
α-リノレン酸、EPA、DHA等。成人目安量は男性2.2〜2.3g、女性1.7〜2.0g。

トランス脂肪酸

分類
脂肪酸/任意表示
主な役割
栄養上積極的に摂る必要はない
特徴
日本人向け目標量は未設定だが、1%エネルギー未満・できるだけ少なくすることが望ましい。表示なしは0gを意味しない。

根拠資料: [1][2][5][7]

必須脂肪酸:n-6系とn-3系の目安量

n-6系の親脂肪酸であるリノール酸と、n-3系の親脂肪酸であるα-リノレン酸は体内で合成できないため、食事から摂る必要があります。体内ではこれらからアラキドン酸、EPA、DHA等が作られますが、変換率には限りがあります。2025年版の成人目安量は、n-6系が男性9〜12g/日、女性8〜9g/日、n-3系が男性2.2〜2.3g/日、女性1.7〜2.0g/日で、年齢により異なります。妊婦・授乳婦はn-6系9g/日、n-3系1.7g/日です。これらは健康な日本人の摂取量中央値を基に設定した目安量で、必要量を直接推定した推奨量ではありません。食事摂取基準はα-リノレン酸単独、EPA・DHA単独、単価不飽和脂肪酸には目標量を設定していません。

根拠資料: [1][2]

飽和脂肪酸は7%エネルギー以下:置き換え先も見る

18歳以上の飽和脂肪酸の目標量は7%エネルギー以下です。飽和脂肪酸の摂取は血中LDLコレステロールとの関連が示されていますが、単に総脂質を減らすだけでは、代わりに何を食べるかが分かりません。食事摂取基準は、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸へ置き換える観点を重視しています。肉や乳製品を一律に禁止するのではなく、脂身、調理油、菓子等を含む食事全体を見て、魚、ナッツ、種子、植物油等の不飽和脂肪酸を含む食品へ無理なく置き換えます。疾患治療中の脂質量・脂肪酸構成は個別指示を優先します。

根拠資料: [1][2]

トランス脂肪酸はできるだけ少なく:表示がないことは0gではない

トランス脂肪酸には、油脂の加工で生じるものと、牛・羊等の反すう動物に由来するものがあります。日本人の平均摂取量は総エネルギーの約0.3%と推定され、2025年版食事摂取基準は日本人向けの目標量を設定していません。一方で、1%エネルギー未満にし、できるだけ少なくすることが望ましいとしています。置き換える場合は飽和脂肪酸ではなく不飽和脂肪酸を選ぶ考え方です。日本のトランス脂肪酸表示は任意で、原材料名だけから含有量を定量できません。表示が見当たらないことを0gと解釈しません。

根拠資料: [1][3][4][7]

栄養成分表示:脂質は義務、脂肪酸の内訳は表示区分が違う

容器包装に入れた一般用加工食品では、例外を除き、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムを食塩相当量に換算した値が義務表示です。飽和脂肪酸と食物繊維は推奨表示、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、コレステロール等は任意表示です。トランス脂肪酸も任意ですが、表示する場合は消費者庁の指針に従い、一般の栄養成分と飽和脂肪酸・コレステロール等を併記します。総脂質だけが表示されている商品から、飽和脂肪酸、n-3系、n-6系、トランス脂肪酸の量を逆算することはできません。

根拠資料: [5][6][7]

脂質表示を100g当たり、1食当たり、1包装当たりで分母をそろえて比較する図

100g・1食・1包装、0g表示、推定値を分けて読む

栄養成分は、販売時の可食部分について100g、100mL、1食、1包装、その他の食品単位当たりで表示できます。脂質2g/28gと2g/100gは同じ濃度ではありません。脂質は、食品100g当たり(飲料は100mL当たり)0.5g未満なら0gと表示できるため、0gは完全な不含の証明ではありません。一定の条件では分析値ではなく合理的な推定値を表示でき、許容差の考え方もあります。比較では表示単位、測定・計算方法、範囲、丸めを残し、換算値を実測値のように扱いません。トランス脂肪酸の0g基準は別で、食品100g当たり0.3g未満です。

根拠資料: [6][7]

収録商品の脂質表示を比較するときの注意

収録商品の脂質表示には、1食当たりと100g当たりが混在し、1食量も商品ごとに異なります。比較では元表示の分母と1食量を保持し、必要な場合だけ100g当たりへ換算します。換算値は濃度をそろえるための値で、脂肪酸組成や表示誤差を補うものではありません。範囲表示は最小値と最大値を残し、中点へ置き換えて順位付けしません。「推定値」や「約」も元の精度を維持します。総脂質の大小だけを健康順位にせず、原材料、飽和脂肪酸等の内訳、1回量、他の栄養成分と合わせて読みます。

根拠資料: [8][9][10][11][12][13][14]

ホエイプロテイン、ゲイナー、食事代替系、食品で脂質表示の基準を確認する図

利用上の注意: このページの目標量は、健康な人の習慣的な食事を対象にした一般的な基準です。脂質異常症、糖尿病、心血管疾患、肝・胆・膵疾患、脂肪吸収障害、摂食障害、手術後、妊娠中の合併症等がある人、小児、医療者から脂質制限・脂肪酸調整を指示されている人は、一般向けの%エネルギーや商品比較だけで食事を変えず、医師・管理栄養士の個別方針を確認してください。極端な低脂質食は、エネルギー不足や必須脂肪酸・脂溶性ビタミンの摂取不足につながり得ます。

脂質のよくある質問

脂質は1日何gが目安ですか?

成人の目標量は固定gではなく、1日の摂取エネルギーの20〜30%です。「kcal×0.20〜0.30÷9」で概算できます。2,000kcalなら約44〜67gですが、必要エネルギーは個人で異なります。

脂質は少ないほど健康によいですか?

一律にはいえません。脂質はエネルギー、細胞膜、脂溶性ビタミンの吸収に必要です。量に加え、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸へ置き換えるなど、脂肪酸の構成と食事全体を見ます。

n-3系とn-6系はどちらを優先すべきですか?

どちらも食事から摂る必要がある必須脂肪酸です。2025年版では別々の年齢・性別別目安量があり、単純な優劣や一つの理想比だけで判断しません。魚、植物油、ナッツ・種子等を食事全体に組み込みます。

栄養成分表示の脂質0gは、本当に含まれていないのですか?

完全な不含を意味しません。脂質は食品100g当たり(飲料は100mL当たり)0.5g未満なら0gと表示できます。食品単位と実際に食べる量も確認します。トランス脂肪酸の0g基準は別です。

脂質は1食当たりと100g当たりのどちらで比較しますか?

目的が違います。1食当たりは実際に摂る量、100g当たりは濃度を同じ条件で比べる目安です。両方を保持し、1食量や分母が違う商品を生のgだけで比較しません。

原材料名からトランス脂肪酸が分かりますか?

原材料名は油脂原料の手掛かりですが、トランス脂肪酸量の定量はできません。日本では表示が任意なので、表示がないことも0gを意味しません。必要ならメーカーの分析・公式情報を確認します。

編集: みんなの成分表編集部記事・データの作成方針運営会社

医師監修

正田 快医師
正田 快 医師

千葉大学病院所属

形成・美容外科

順天堂大学医学部卒

最終監修日: 2026.07.18

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