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この記事の要点
- ビタミンB12は赤血球形成、DNA合成、神経系の維持に必要ですが、充足している人が多く摂るほど疲労や認知機能が改善するとはいえません。
- 日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人男女、妊婦、授乳婦の目安量は4.0µg/日です。従来の2.4µgをそのまま使わないようにします。
- 食品中のB12の吸収には胃酸、消化酵素、内因子、回腸末端が関わるため、ヴィーガンだけでなく高齢者、胃腸の病気・手術後の人も不足リスクがあります。
- 血清B12だけで欠乏を完全には判定できず、症状、血算、活性型B12、メチルマロン酸、ホモシステインなどを原因と合わせて評価します。
- シアノコバラミン、メチルコバラミン、舌下などの名称だけで優劣を決めず、栄養成分量、1日目安量、食品か医薬品かを先に確認します。
ビタミンB12とは
ビタミンB12は、コバルトを含む化合物群「コバラミン」のうち、ビタミンB12活性をもつものの総称です。体内ではメチルコバラミンとアデノシルコバラミンが補酵素として働き、メチオニン合成酵素とメチルマロニルCoAムターゼの反応を支えます。その結果、DNA合成、アミノ酸・脂肪酸代謝、健康な赤血球の形成、中枢神経系の発達と髄鞘形成・機能に関わります。必要な栄養素であることと、欠乏のない人に追加すると活力・持久力・認知機能が高まることは別の主張です。
胃酸・内因子・回腸を通る吸収のしくみ
食品中のビタミンB12はたんぱく質と結合しています。胃酸とペプシンなどで食品から遊離したB12は、まず唾液・胃由来のハプトコリンと結合します。十二指腸で膵酵素によりハプトコリンから外れ、胃壁細胞が分泌する内因子と結合した複合体が、主に回腸末端の受容体から取り込まれます。強化食品やサプリメントのB12は一般に遊離型で、食品たんぱく質から外す最初の工程を必要としません。ただし、内因子や回腸が不要になるわけではなく、大量摂取時に内因子非依存で吸収されるのは投与量の一部です。

2025年版の成人値は、推奨量ではなく目安量4.0µg
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、18歳以上の男女のビタミンB12は目安量4.0µg/日です。妊婦・授乳婦も4.0µg/日で、成人への付加量は設けられていません。これは、欠乏回避に必要な最小量を精密に求める根拠が十分でないため、良好な生化学指標を維持できる摂取量から設定した「目安量」です。推奨量や治療量ではありません。過剰摂取による健康障害を示す十分な根拠がないため耐容上限量は設定されていませんが、上限未設定を無制限摂取の推奨や追加効果の証明と解釈しません。
根拠資料: [1]
摂取量が平均を超えていても、吸収不良による欠乏はあり得る
厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査では、1歳以上をまとめたビタミンB12摂取量の総数平均は5.3µg/日、中央値は3.5µg/日でした。これは年齢構成を含む1日調査の集団値で、個人の長期摂取量や栄養状態を直接示しません。B12は体内に蓄えられるため、摂取不足の症状が現れるまで年単位を要することがあります。一方、内因子欠乏や消化管手術などでは、摂取量が十分でも吸収できません。食事記録だけで欠乏を否定せず、集団平均だけで全員の不足を断定しないことが重要です。
ビタミンB12を多く含む食品
ビタミンB12の主な自然食品源は魚介類、肉類、卵、乳製品などです。文部科学省の食品成分データベースでは可食部100g当たり、しじみ(生)68.0µg、あさり(生)44.8µg、まいわし(生)16.0µg、鶏卵全卵(生)1.1µgです。いずれも100g当たりで、1食当たりではありません。貝類100gと卵100gでは通常の1回量が異なり、生・水煮・焼きなど食品状態でも値が変わります。含有量の順位だけでなく、実際に食べる量、頻度、調理状態を合わせて見ます。
ヴィーガン・菜食では、強化食品かサプリの表示を確認する
ビタミンB12の確実な自然食品源は主に動物性食品であるため、動物性食品を全く摂らないヴィーガンや、摂取範囲が限られる菜食では不足リスクが高くなります。植物性という名称だけではB12供給源にならず、B12強化食品は栄養成分表示で実際の配合量を確認します。藻類・発酵食品などを一律に安定した供給源とみなさず、B12量が確認された強化食品やサプリメントを継続的に確保する必要があります。妊娠・授乳中や乳児では母子双方への影響があるため、自己流の食事設計だけで済ませず、医療職・管理栄養士へ相談します。
高齢者、胃腸の病気・手術後では吸収不良に注意
高齢者では萎縮性胃炎や胃酸分泌低下が増え、食品たんぱく質からB12を遊離しにくくなることがあります。自己免疫性胃炎では胃壁細胞が損なわれ、胃酸と内因子の両方が減る場合があります。胃切除・胃バイパスなどは胃酸・内因子の工程に、回腸末端切除や回腸を侵す疾患は吸収部位に影響します。セリアック病やクローン病などもリスク要因ですが、病変部位や手術範囲で影響は異なります。こうした吸収不良は、B12の多い食品を増やすだけでは解決しないことがあるため、原因に応じた検査と治療が必要です。
欠乏は貧血だけではなく、神経症状だけで現れることもある
ビタミンB12欠乏では巨赤芽球性貧血、疲労、舌炎などに加え、手足のしびれ・感覚異常、歩行の変化、認知・精神症状などが起こり得ます。神経症状は貧血や大球性変化を伴わないことがあり、血算が正常という理由だけで欠乏を除外できません。症状は他の病気でも生じるため自己診断はできませんが、進行した神経障害は回復しにくい場合があります。しびれ、歩きにくさ、強い倦怠感などが続く場合は、サプリメントだけで様子を見ず医療機関で評価を受けます。
血清B12だけでは決められない、検査の限界
欠乏評価では血清総B12または活性型B12(ホロトランスコバラミン)が初期検査に使われますが、測定法・検査室で判定域が異なり、境界値では症状と原因を合わせて考えます。メチルマロン酸(MMA)はB12依存反応の低下を反映しますが、腎機能低下や加齢でも上がります。ホモシステインはB12低下で上がる一方、葉酸不足や腎機能などの影響も受け、特異的ではありません。市販B12製品の使用は総B12・活性型B12値を上げ、欠乏が十分に治っていなくても見かけの値を変える場合があります。単一の数値で自己診断せず、補充開始前の採血可否を含め医療機関で判断します。
葉酸とB12は赤血球形成で関係するが、置き換えられない
葉酸とビタミンB12はいずれもDNA合成と正常な造血に関わり、どちらの欠乏でも巨赤芽球性貧血が起こり得ます。しかし、B12欠乏では神経障害が起こり得る点が重要です。葉酸を先に補うと貧血などの血液学的所見が改善し、基礎にあるB12欠乏が見えにくくなっても、神経系への影響は残る可能性があります。そのため、葉酸欠乏を治療する前にB12状態を確認する臨床指針があります。葉酸入りサプリを選ぶ場合も、B12欠乏のリスクや症状を葉酸だけで覆わないようにします。

シアノコバラミン、メチルコバラミン、舌下製品の見方
サプリメントではシアノコバラミンがよく使われ、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン、ヒドロキソコバラミンなどもあります。メチル型とアデノシル型は体内で補酵素として働く形ですが、「活性型」という名称だけで、サプリメントとしての吸収率や臨床効果がシアノ型より必ず高いとはいえません。公的レビューでは形態別の吸収率差を示す根拠はなく、経口と舌下の有効性にも明確な差を示していません。高用量になるほど吸収される割合は低下するため、表示量を目安量で単純に割って「何日分吸収される」とは計算しません。個別の欠乏治療では原因により経口・注射、量、期間が異なり、食品用サプリの比較とは別です。

栄養機能食品の0.72〜60µgは、目安量や治療量ではない
2026年7月18日に確認した現行の食品表示基準では、ビタミンB12の栄養機能を表示する食品は、1日当たりの摂取目安量に0.72〜60µgを含む必要があり、所定の機能文言は「赤血球の形成を助ける栄養素」であることを示します。栄養機能食品は個別に国の許可を受ける制度ではなく、基準を満たす事業者の自己認証です。0.72〜60µgは機能表示を付ける制度値で、個人の必要量や安全上限ではありません。栄養素等表示基準値4.0µgとも役割が異なるため、パーセント表示と食事摂取基準を同一視しません。
栄養成分B12とOTC医薬品の有効成分を分ける
食品・サプリメントの「ビタミンB12」は栄養成分です。一方、一般用医薬品のビタミン主薬製剤承認基準には、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メコバラミンなどが有効成分として収載され、製剤区分ごとの分量基準があります。医薬品の有効成分量は、栄養機能食品の0.72〜60µgや成人目安量4.0µgを基準に自己調整するものではありません。点眼薬など経口でない製品もあるため、形態名だけを拾って栄養摂取量へ足しません。商品区分、投与経路、1回・1日量、効能・効果、用法・用量を別に確認します。
ビタミンB12に関する表示の違い
同じB12群でも、栄養成分名、化学形態、医薬品有効成分、関連する別ビタミンでは、表示の目的と比較軸が異なります。吸収や効果のランキングではなく、商品区分を見分けるための比較です。
ビタミンB12
- 分類
- 食品・サプリメントの栄養成分
- 主な役割
- 食事から摂る必須ビタミンとして総量を示す
- 特徴
- 通常はµg表示。1日摂取目安量、1食、100gなどの分母をそろえ、日本の目安量と制度値を区別する。
シアノコバラミン
- 分類
- B12形態・医薬品有効成分名
- 主な役割
- 体内で補酵素型へ変換され、B12を供給する
- 特徴
- サプリ原料にもOTC有効成分にも使われる。名称だけで吸収率が低い、または他形態より劣るとは判定しない。商品区分と量を確認する。
メコバラミン
- 分類
- メチル型B12・医薬品有効成分名
- 主な役割
- 体内で補酵素として働くB12形態
- 特徴
- 「活性型」という名称を食品用サプリの普遍的な優越性へ置き換えない。OTCでは効能・効果と用法・用量を優先する。
葉酸
- 分類
- 造血・一炭素代謝に関わる別の水溶性ビタミン
- 主な役割
- DNA合成と正常な赤血球形成を支える
- 特徴
- B12と共通する貧血所見があるが置き換えられない。葉酸だけでB12欠乏の血液所見を見えにくくしないよう注意する。
利用上の注意: 貧血がなくてもB12欠乏による神経症状が起こることがあります。しびれ、歩行の変化、強い倦怠感などが続く場合、胃・回腸の手術歴、自己免疫性胃炎、吸収不良疾患がある場合、メトホルミンや胃酸分泌抑制薬を長期使用している場合は、自己判断の葉酸・B12大量摂取だけで済ませず医師・薬剤師へ相談してください。処方薬を自己判断で中止せず、OTC医薬品は添付文書の用法・用量を優先します。
ビタミンB12のよくある質問
ビタミンB12は1日何µg必要ですか?
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、18歳以上の男女、妊婦、授乳婦の目安量は4.0µg/日です。推奨量や治療量ではなく、子どもは年齢別の値を確認します。
ビタミンB12を多く含む食品は何ですか?
魚介類、肉類、卵、乳製品などです。食品成分データベースの可食部100g当たりでは、しじみ生68.0µg、あさり生44.8µg、まいわし生16.0µg、鶏卵全卵生1.1µgです。実際の1食量と食品状態を合わせて見ます。
ヴィーガンはビタミンB12が不足しますか?
動物性食品を摂らない場合は不足リスクが高まります。B12量が表示された強化食品やサプリメントを継続的な供給源として確認し、妊娠・授乳中や乳児では医療職・管理栄養士へ相談してください。
食事で4.0µg以上摂っていれば欠乏しませんか?
そうとは限りません。胃酸、内因子、膵酵素、回腸末端が吸収に関わるため、自己免疫性胃炎、胃・回腸の手術、消化管疾患、薬の影響などでは摂取量が十分でも不足することがあります。
血清ビタミンB12が正常なら欠乏を否定できますか?
単独では完全に否定できません。検査法、症状、サプリ使用、血算、活性型B12、MMA、ホモシステイン、腎機能や葉酸状態などを合わせて医療機関が判断します。
葉酸を摂ればビタミンB12の代わりになりますか?
なりません。どちらも造血に関わりますが、B12欠乏では神経障害が起こり得ます。葉酸で貧血所見が改善してB12欠乏が見えにくくなる場合があるため、症状やリスクがある人はB12も評価します。
メチルコバラミンはシアノコバラミンより優れていますか?
名称だけで万人に優れるとはいえません。メチル型は体内で働く補酵素型ですが、公的レビューではサプリメントの形態によって吸収率が異なる根拠は示されていません。商品区分、B12量、用法を確認します。
舌下のビタミンB12は経口錠より吸収がよいですか?
舌下製品と通常の経口製品で有効性に差がないことを示唆するレビューがあります。剤形だけで選ばず、表示量、1日目安量、継続しやすさ、治療目的かどうかを確認します。
メトホルミンや胃薬を使っているときはどうしますか?
メトホルミン、PPI、H2受容体拮抗薬などはB12の吸収・濃度に影響する場合があります。薬を自己判断で中止せず、使用期間、症状、他のリスクを処方医・薬剤師に伝え、検査や補充の要否を確認します。
耐容上限量がないなら、高用量でも問題ありませんか?
上限未設定は無制限摂取の推奨ではありません。高用量ほど吸収される割合は下がり、欠乏のない人への追加効果も確立していません。製品の1日目安量を守り、治療目的の高用量は医療機関の方針に従います。
参考文献
- [1]厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』各論 水溶性ビタミン・ビタミンB12(公的基準・レビュー)
- [2]厚生労働省eJIM『ビタミンB12[医療者向け]』(NIH ODS資料の日本語版、2025年6月19日掲載)
- [3]NICE NG239: Vitamin B12 deficiency in over 16s—Recommendations(診断・管理ガイドライン)
- [4]NHS: Vitamin B12 or folate deficiency anaemia—Treatment(公的患者向け臨床情報)
- [5]厚生労働省『令和5年 国民健康・栄養調査報告』栄養素等摂取量(全国調査)
- [6]文部科学省 食品成分データベース『魚介類/しじみ/生』可食部100g当たり
- [7]文部科学省 食品成分データベース『魚介類/あさり/生』可食部100g当たり
- [8]文部科学省 食品成分データベース『魚介類/まいわし/生』可食部100g当たり
- [9]文部科学省 食品成分データベース『卵類/鶏卵/全卵/生』可食部100g当たり
- [10]文部科学省 食品成分データベース ヘルプ(成分値・重量換算の読み方)
- [11]消費者庁『食品表示基準』別表第10・第11(2026年4月1日時点、法令表)
- [12]消費者庁『栄養機能食品について』(制度説明)
- [13]厚生労働省『ビタミン主薬製剤製造販売承認基準』(一般用医薬品承認基準)
医師監修

千葉大学病院所属
形成・美容外科
順天堂大学医学部卒
最終監修日: 2026.07.18
