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この記事の要点
- 葉酸は一炭素代謝を通じてDNA・RNA合成、アミノ酸代謝、細胞分裂、赤血球形成を支えます。
- 成人15歳以上の推奨量は男女とも240µg/日です。
- 妊娠計画中・妊娠の可能性がある・妊娠初期の女性には、通常食品以外からfolic acid 400µg/日が望まれます。
- 妊娠初期の付加量0と受胎前後の400µg推奨は、対象と供給源が異なるため矛盾しません。
- サプリメント等の耐容上限量は年齢により900〜1,000µg/日で、食品中の天然型葉酸には適用しません。
葉酸とは:細胞が増えるときに必要なビタミンB群
葉酸は水溶性のビタミンB群です。体内では補酵素として一炭素単位を受け渡し、DNA・RNAの材料となるヌクレオチドの合成、メチオニンを含むアミノ酸代謝、細胞分裂、正常な赤血球形成を支えます。葉酸が不足するとDNA合成が滞り、正常に成熟できない大型の赤血球が生じる巨赤芽球性貧血につながることがあります。細胞分裂が盛んな組織や発育期に重要ですが、『細胞に必要』という事実から、肌、髪、疲労、妊娠率など特定の効果を一律に導くことはできません。
folate・folic acid・葉酸の違い
英語のfolateは、食品中のさまざまな還元型葉酸と、関連する葉酸化合物を含む総称です。folic acidは、プテロイルモノグルタミン酸という安定した酸化型で、サプリメントや栄養強化食品に広く使われます。食品中では複数のグルタミン酸が結合した形が多く、消化・吸収の過程を経ます。日本語では両方が『葉酸』と表示されることがあるため、原材料名、成分形、供給源を見ないと化学形までは判断できません。

葉酸の形と表示の違い
日本語ではいずれも『葉酸』と表示され得ますが、食品、サプリメント、医薬品では化学形、目的、基準が異なります。
食品中のfolate
- 分類
- 通常の食品
- 主な役割
- 食事から葉酸を摂取
- 特徴
- 緑葉野菜、豆類、果物などに含まれる複数の葉酸化合物。通常食品以外の耐容上限量は適用しません。
folic acid(プテロイルモノグルタミン酸)
- 分類
- サプリ・強化食品
- 主な役割
- 葉酸の補給、受胎前後の公的推奨で用いられる形
- 特徴
- 安定した合成型。妊娠計画中・可能性・初期の400µg推奨と、通常食品以外の耐容上限量の対象です。
5-MTHF(メチル葉酸)
- 分類
- サプリメント
- 主な役割
- 葉酸の補給
- 特徴
- 還元型葉酸の一種。全員にfolic acidより優れるとは確立しておらず、神経管閉鎖障害予防の公的推奨を自己判断で置換しません。
葉酸関連医薬品
- 分類
- 医薬品
- 主な役割
- 診断・治療計画に基づく補充や救援療法
- 特徴
- 栄養補助サプリと用量・目的・服用時期が異なります。メトトレキサート治療等では医師の指示を優先します。
成人の1日摂取量:15歳以上の推奨量は240µg
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、15歳以上の男性・女性の推奨量は240µg/日です。これは欠乏を防ぐために、多くの人で必要量を満たすよう設定された習慣的摂取量の目安です。年齢が上がっても成人の推奨量は同じですが、食事量や服薬、吸収に関わる病気は個人で異なります。1食や1日だけ240µgを下回ったことから、直ちに欠乏とは判断しません。食品成分表の葉酸量と食べた重量、サプリメントの1日摂取目安量を分けて、長期的な食事全体で確認します。
葉酸を含む食べ物
葉酸は、ほうれん草・ブロッコリー等の緑色野菜、枝豆・納豆・豆類、アボカド、いちご・柑橘類、のり、レバーなどに含まれます。水溶性で、食品や調理条件によって加熱・ゆで汁への溶出による損失が生じますが、生食だけに限定する必要はありません。汁ごと食べる、電子レンジや蒸し調理を使う、複数の食品群を組み合わせるなどが現実的です。正確な量は食品の可食部、調理状態、重量を文部科学省の食品成分データベースで確認します。妊娠中にレバーを多量・頻回に食べる方法はビタミンAも多くなるため、葉酸だけを理由に勧めません。
妊娠前から初期にfolic acid 400µgが勧められる理由
厚生労働省は、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の女性に対し、バランスのよい食事に加えて、通常の食品以外からfolic acid 400µg/日を摂ることが望ましいとしています。脳や脊髄のもとになる神経管は、妊娠に気づく前を含むごく早期に形成されるため、妊娠判明後だけではなく受胎前からの摂取が重要です。400µgは神経管閉鎖障害のリスク低減に関する推奨であり、妊娠率を高める量でも、すべての神経管閉鎖障害を防ぐ保証でもありません。

妊娠初期の付加量0と400µg推奨は矛盾しない
食事摂取基準では、通常の食品から摂る葉酸について妊娠初期の付加量は0、妊娠中期・後期は推定平均必要量+200µg、推奨量+240µgです。一方、400µgは妊娠前から初期に、通常食品以外のfolic acidを追加する推奨です。つまり『妊娠初期は葉酸不要』という意味ではありません。中期・後期の推奨量は同年代女性の240µgに+240µgした合計480µg/日を食事由来の葉酸当量として考える基準で、サプリを一律240µg追加する指示ではありません。
授乳中の付加量
授乳婦の付加量は、母乳へ移行する葉酸を補う考え方から、推定平均必要量+80µg、推奨量+100µg/日です。したがって成人女性の推奨量240µgに対する合計は340µg/日です。この値は習慣的な食事摂取の基準で、授乳中の全員に100µgのサプリメントを追加する指示ではありません。妊娠期から同じ複合サプリを続ける場合は、葉酸以外のビタミン・ミネラルも含めて1日量を確認します。妊娠前から初期の神経管閉鎖障害リスク低減を目的とする400µg追加とは、対象時期と目的が異なります。
根拠資料: [2]
葉酸不足と巨赤芽球性貧血
葉酸が不足するとDNA合成が滞り、骨髄で赤血球のもとになる細胞が正常に成熟できず、巨赤芽球性貧血を生じることがあります。疲れやすさ、息切れ、動悸、舌の痛みなどがみられることがありますが、症状だけで葉酸欠乏とは判断できません。偏った食事だけでなく、吸収不良、アルコールの多量摂取、需要増加、薬の影響なども背景になり得ます。鉄欠乏性貧血やビタミンB12欠乏でも似た症状があり、検査で原因を区別することが重要です。
根拠資料: [5]
ビタミンB12欠乏を見逃さない
葉酸とビタミンB12の不足はいずれも巨赤芽球性貧血を起こし得ます。高用量のfolic acidを摂ると、B12欠乏の貧血所見が改善しても、B12欠乏によるしびれ、歩行障害、認知機能変化などの神経障害は進行する可能性があります。このため、原因不明の貧血や神経症状を葉酸サプリだけで自己治療しません。特に高齢者、胃・小腸の手術歴、吸収障害、完全菜食などB12不足の背景がある人は、医療機関で評価します。

葉酸の上限:通常食品以外のfolic acidに適用
2025年版の耐容上限量は、サプリメントや強化食品など通常の食品以外に含まれるプテロイルモノグルタミン酸について、15〜29歳900µg/日、30〜64歳1,000µg/日、65歳以上900µg/日です。通常の食品に含まれる天然型葉酸へこの上限は適用しません。耐容上限量は推奨量ではなく、有害影響を避けるための上限です。複数の妊娠向けサプリ、マルチビタミン、強化食品を併用するときは合計量を確認します。
栄養機能食品の72〜200µgは、推奨量や上限ではない
葉酸を栄養機能食品として表示する現行範囲は、1日摂取目安量当たり72〜200µgです。この範囲は規格基準に基づく表示制度の条件で、成人の推奨量240µg、受胎前後のfolic acid 400µg、耐容上限量900〜1,000µgとは目的が異なります。栄養機能食品は、規格へ適合すれば事業者の責任で表示でき、国が製品ごとに有効性を審査したものではありません。制度見直しが進んでいるため、公開・購入時は消費者庁の最新情報を確認します。

メチル葉酸(5-MTHF)とMTHFR遺伝子
一部のサプリメントには5-メチルテトラヒドロ葉酸(5-MTHF、メチル葉酸)が使われます。代謝経路上の活性型に近い形ですが、製品ごとの安定性、用量、表示換算が異なり、すべての人にfolic acidより優れると結論づけることはできません。MTHFR 677C>Tなどの遺伝子多型があっても、神経管閉鎖障害のリスク低減について公衆衛生機関が一貫して推奨しているのはfolic acidです。遺伝子検査結果だけで市販品を高用量へ変更しません。
根拠資料: [5]
薬との相互作用:自己判断で葉酸を足したり止めたりしない
メトトレキサートは葉酸代謝に作用する薬です。がん治療で高用量を使う場合と、関節リウマチ・乾癬などで低用量を使い葉酸を併用する場合では、目的、量、曜日、救援療法が異なります。フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸などの抗てんかん薬は葉酸状態へ影響し、葉酸側も一部薬剤の血中濃度へ影響する可能性があります。スルファサラジンは葉酸吸収を妨げることがあります。処方薬を使っている人は、サプリ名・含有量を医師・薬剤師へ伝え、自己判断で服用時刻や量を変えません。
利用上の注意: 妊娠を計画している・妊娠の可能性がある・妊娠初期の女性は、食事に加えてfolic acid 400µg/日という公的推奨を確認してください。ただし、過去の神経管閉鎖障害妊娠、持病、吸収障害、貧血、しびれ等の神経症状がある人、メトトレキサート・抗てんかん薬・スルファサラジン等を使用する人は、一般向け製品を自己調整せず医師・薬剤師へ相談します。複数製品を使う場合は通常食品以外のfolic acid合計量を確認します。
葉酸のよくある質問
葉酸にはどんな働きがありますか?
DNA・RNAの合成、アミノ酸代謝、細胞分裂、正常な赤血球形成に関わる水溶性ビタミンB群です。特に細胞分裂が盛んな時期や組織で重要です。
folateとfolic acidは同じですか?
folateは食品中の天然型を含む葉酸化合物の総称です。folic acidは安定した酸化型のプテロイルモノグルタミン酸で、サプリメントや強化食品に多く使われます。日本語ではどちらも『葉酸』と表示されることがあります。
成人は葉酸を1日に何µg摂ればよいですか?
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、15歳以上の男性・女性の推奨量は240µg/日です。これは習慣的摂取量の基準です。
妊娠前はなぜ葉酸400µgが必要ですか?
胎児の神経管は妊娠に気づく前を含むごく早期に形成されるためです。妊娠計画中・妊娠の可能性がある・妊娠初期の女性には、食事に加えて通常食品以外からfolic acid 400µg/日が望まれます。
葉酸400µgは食事分を含む合計ですか?
この推奨は、バランスのよい食事に加えて、サプリメント等の通常食品以外からfolic acid 400µg/日を摂るという意味です。複数製品を使う場合は通常食品以外からの合計を確認します。
妊娠初期の付加量が0なのに、400µg必要なのはなぜですか?
付加量0は通常食品から摂る食事摂取基準上の付加量です。400µgは神経管閉鎖障害リスク低減のため、受胎前から初期に通常食品以外のfolic acidを追加する別の推奨です。
葉酸サプリはいつからいつまで飲めばよいですか?
妊娠を計画した段階から、妊娠の可能性がある時期、妊娠初期に400µg/日が重視されます。中期・後期や授乳期にも葉酸需要はありますが、必要な製品と量は食事・ほかの栄養素・服薬で変わるため、産科で確認してください。
妊娠中期・後期は1日に何µgですか?
通常食品からの推奨量は、同年代女性の240µgに付加量240µgを加えた480µg/日です。これはサプリを一律240µg追加する指示ではありません。
授乳中は1日に何µgですか?
推奨量は成人女性240µgに付加量100µgを加えた340µg/日です。食事を含む習慣的摂取の基準で、100µgのサプリ追加を一律に指示する値ではありません。
葉酸が多い食べ物は何ですか?
緑色野菜、豆類、納豆、アボカド、果物、のり、レバーなどに含まれます。含有量は食品と調理状態で変わるため、食品成分データベースで可食部と重量を確認します。
葉酸は加熱すると減りますか?
葉酸は水溶性で、食品や調理条件により加熱やゆで汁への溶出で減ることがあります。汁ごと食べる、蒸す、電子レンジを使うなどの方法もありますが、生食だけに限定する必要はありません。
葉酸の上限は何µgですか?
通常食品以外のfolic acidについて、15〜29歳と65歳以上は900µg/日、30〜64歳は1,000µg/日です。食品中の天然型葉酸を含めた総量の上限ではなく、摂取目標でもありません。
葉酸を摂りすぎるとビタミンB12欠乏を隠しますか?
高用量folic acidでB12欠乏の貧血所見が改善しても、神経障害が進む可能性があり、診断を遅らせる懸念があります。原因不明の貧血やしびれを葉酸だけで自己治療しないでください。
メチル葉酸はfolic acidよりよいですか?
5-MTHFはサプリに使われる形ですが、すべての人にfolic acidより優れるとは確立していません。神経管閉鎖障害リスク低減について公的に推奨されているfolic acidを、遺伝子情報だけで自己判断して置き換えません。
メトトレキサート服用中に葉酸サプリを飲めますか?
治療目的と用量で扱いが異なります。低用量メトトレキサートで医師が葉酸を併用する場合もありますが、がん治療等では別の管理になります。自己判断で追加・中止・服用日変更をせず、処方医へ確認してください。
抗てんかん薬と葉酸を一緒に飲めますか?
一部の抗てんかん薬は葉酸状態へ影響し、葉酸側も薬の血中濃度へ影響する可能性があります。妊娠計画も含め、薬を自己中止せず神経内科・産科・薬剤師へ相談してください。
葉酸400µgを飲めば神経管閉鎖障害を必ず防げますか?
いいえ。400µg/日はリスクを低減するための推奨ですが、神経管閉鎖障害には葉酸以外の要因もあり、リスクをゼロにはできません。妊娠前からの健康管理と産科受診も重要です。
男性にも葉酸は必要ですか?
必要です。葉酸は男女ともDNA合成、アミノ酸代謝、赤血球形成に関わり、15歳以上の男性の推奨量も240µg/日です。妊娠前後の400µg推奨は対象が異なります。
参考文献
- [1]厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)報告書
- [2]厚生労働省 食事による栄養摂取量の基準:葉酸
- [3]厚生労働省 e-ヘルスネット:日本人の食事摂取基準
- [4]厚生労働省 e-ヘルスネット:葉酸
- [5]NIH Office of Dietary Supplements: Folate — Health Professional Fact Sheet
- [6]消費者庁:栄養機能食品について
- [7]消費者庁:栄養機能食品の現行基準値(葉酸72〜200µg)
- [8]消費者庁:葉酸の栄養機能表示・注意喚起
- [9]消費者庁:栄養機能食品制度の見直しに関する最新情報
- [10]PMDA:メトトレキサート製剤 添付文書情報
- [11]文部科学省:食品成分データベース
医師監修

千葉大学病院所属
形成・美容外科
順天堂大学医学部卒
最終監修日: 2026.07.18