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この記事の要点
- 亜鉛は酵素反応やたんぱく質の構造維持に関わる必須ミネラルで、欠乏時には皮膚炎、味覚障害、成長遅延等が起こり得ます。
- 2025年版の成人推奨量は男性9.0〜9.5mg/日、女性7.0〜8.0mg/日、耐容上限量は男性40〜45mg/日、女性35mg/日です。年齢を確認します。
- かき、肉、魚介は利用されやすい亜鉛源です。豆、ナッツ、全粒穀物にも含まれますが、フィチン酸は吸収を低下させ得ます。
- 継続的な高用量摂取は銅の吸収を妨げ、銅欠乏、貧血・血球減少、神経障害につながることがあります。複数製品の合計量を見ます。
- 栄養機能食品は自己認証の食品、医療用亜鉛製剤は診断・検査・処方に基づく医薬品です。mgが似ていても代替できません。
亜鉛とは?体内での主な働き
亜鉛(Zn)は必須の微量ミネラルです。成人の体内にはおよそ2g存在し、亜鉛を含むたんぱく質は、酵素反応の触媒や、たんぱく質・細胞構造の維持に働きます。DNA・たんぱく質合成、細胞分裂、成長、皮膚・粘膜、免疫、創傷治癒、味覚等にも関わります。ただし、生理機能に関わることは、必要量を満たしている人が追加摂取すれば各機能がさらに高まることを意味しません。食事摂取基準も、必要量を超える亜鉛による生活習慣病予防の定量的根拠は不足しているとしています。

吸収は食品で変わる:フィチン酸の影響
摂取した亜鉛の全量が吸収されるわけではありません。腸管の吸収率は摂取量や食事構成で変わり、摂取量が増えるほど吸収量は増えても吸収率は下がる傾向があります。肉・魚介等の動物性食品は一般に利用されやすい亜鉛源です。豆類、ナッツ、全粒穀物にも亜鉛は含まれますが、植物中のリンの貯蔵形態であるフィチン酸塩が腸内で亜鉛と結合し、吸収を低下させることがあります。影響は食事全体の亜鉛量・フィチン酸量等で変わるため、「植物性食品の亜鉛は吸収されない」「特定の食品を組み合わせれば必ず吸収できる」とは断定しません。

1日に必要な量:2025年版食事摂取基準
健康な成人の推奨量は、18〜29歳男性9.0mg/日、30〜64歳男性9.5mg/日、65〜74歳男性9.0mg/日、75歳以上男性9.0mg/日です。女性は18〜29歳7.5mg/日、30〜64歳8.0mg/日、65〜74歳7.5mg/日、75歳以上7.0mg/日です。耐容上限量は男性が年齢により40または45mg/日、成人女性は35mg/日です。妊婦は初期の付加量0mg、中期・後期+2.0mg/日、授乳婦は+3.0mg/日です。これらは健康な人の習慣的な食事計画値で、亜鉛欠乏症やウィルソン病の治療量ではありません。
亜鉛を含む食品:100g当たりと1食量を分ける
文部科学省の食品成分データベースでは、例として、かき・養殖・生は14.0mg、和牛肉・もも・赤肉・生は4.5mg、カシューナッツ・フライ・味付けは5.4mg、糸引き納豆は1.9mgの亜鉛を可食部100g当たりに含みます。これは濃度を同じ基準で比べる数値で、通常の1食量ではありません。かき100g、ナッツ100g、納豆100gでは実際に食べる量や他の栄養成分が異なります。摂取量は可食部重量へ換算し、調理状態・食品番号が変われば別の値として扱います。植物性食品は有用な供給源ですが、含有量だけで吸収量は決まりません。
亜鉛欠乏と味覚異常:症状だけで自己診断しない
亜鉛欠乏では、皮膚炎、味覚障害、慢性下痢、免疫機能障害、成長遅延等が起こり得ます。一方、味覚異常には口腔・鼻の状態、感染症、加齢、薬、疾患等さまざまな原因があり、味が分かりにくいことだけで亜鉛欠乏とは判断できません。血清亜鉛濃度も、採血時刻、感染・炎症、年齢・性別等の影響を受け、食事摂取量や体内の充足度と必ずしも一致しません。症状が続く、食事量が落ちる、体重減少や慢性下痢がある、経腸・静脈栄養中、消化管疾患がある場合は、サプリだけで対処せず医療機関で原因と検査を確認します。
栄養機能食品の現行表示と、2026年改正諮問
栄養機能食品は、定められた量・機能文言・注意表示等を満たす食品の自己認証制度で、国が個別商品を審査・許可する制度ではありません。2026年7月18日に消費者庁サイトで確認できる現行リーフレットでは、亜鉛は1日摂取目安量当たり2.64〜15mgで、味覚、皮膚・粘膜、たんぱく質・核酸代謝に関する定型文と、銅吸収阻害等の注意を表示します。この15mgは栄養機能を表示するための制度上限で、食事摂取基準の耐容上限量ではありません。なお消費者庁は2026年7月17日、上限17mgへの見直しや機能文言の変更を含む食品表示基準改正を消費者委員会へ諮問したと公表しました。諮問は施行済み改正ではないため、現行値と混在させず、公開直前に公布・施行日・経過措置を再確認します。
栄養機能食品と医療用亜鉛製剤は目的が違う
栄養機能食品は、栄養成分の補給に利用する食品です。これに対し、医療用の酢酸亜鉛水和物製剤ノベルジンは処方箋医薬品で、効能・効果はウィルソン病と低亜鉛血症です。低亜鉛血症では食事等による摂取で十分な効果が期待できない患者に使用し、成人・体重30kg以上の小児では亜鉛として1回25〜50mgを1日2回から開始し、血清亜鉛濃度や状態に応じて調整します。これは一般向けの摂取推奨ではありません。医療用量が食事摂取基準の耐容上限量に近い、または超える場合があるのは、診断、治療利益、検査、銅濃度、副作用、相互作用を医療者が管理するためです。食品や市販サプリで処方薬を代用せず、処方薬をサプリのように増減しません。

食品・栄養機能食品・医療用亜鉛製剤の違い
同じ「亜鉛mg」でも、目的、表示単位、制度、管理方法が違います。表は優劣ではなく、数値をどの基準で読むかを整理したものです。
通常の食品
- 分類
- 食事
- 主な役割
- 日々の食事から亜鉛と他の栄養素を摂る
- 特徴
- 食品成分DBは原則可食部100g当たり。実摂取量と吸収は、食べた重量、食品、フィチン酸等で変わる。
一般のサプリ・健康食品
- 分類
- 食品
- 主な役割
- 食品として亜鉛を補給する
- 特徴
- 栄養成分量を表示していても、必ずしも栄養機能食品ではない。1日目安量、他製品との重複、注意表示を確認する。
栄養機能食品(亜鉛)
- 分類
- 食品表示制度
- 主な役割
- 基準範囲と定型文で亜鉛の栄養機能を表示する
- 特徴
- 現行は1日目安量2.64〜15mgの自己認証制度。個別審査、欠乏症の診断、治療効果、DRIの上限を意味しない。
医療用亜鉛製剤
- 分類
- 医薬品
- 主な役割
- 診断された低亜鉛血症やウィルソン病等を治療する
- 特徴
- 処方、用量調整、血清亜鉛・銅等の検査、副作用・相互作用管理を伴う。食品やサプリと相互代替しない。
食事摂取基準の推奨量・耐容上限量
- 分類
- 健康な人の栄養計画指標
- 主な役割
- 習慣的な摂取不足・過剰を避ける基準
- 特徴
- 成人推奨量7.0〜9.5mg/日、耐容上限量35〜45mg/日。商品認証範囲や治療用量ではない。
過剰摂取は銅欠乏につながる
大量の亜鉛を継続して摂ると、銅の吸収が阻害され、銅欠乏が起こることがあります。日本人の食事摂取基準は、銅状態への影響等を根拠に成人の耐容上限量を設定しています。高用量では悪心、胃部不快感、嘔吐、食欲低下等も起こり得ます。銅欠乏が進むと、貧血、白血球・好中球等の減少、歩行障害やしびれ等の神経障害につながることがあります。処方箋医薬品の添付文書でも銅欠乏症は重大な副作用とされ、低亜鉛血症の治療中は血清銅濃度の定期確認が望ましいとされています。単体亜鉛、マルチミネラル、のど飴等を重ねる場合は、各製品の1日量を合計します。銅を自己判断で追加すれば安全になるという意味でもありません。

薬との相互作用と、相談が必要な人
亜鉛は消化管内で一部の薬と結合し、亜鉛側または薬側の吸収を低下させることがあります。医療用酢酸亜鉛の添付文書では、ペニシラミン・トリエンチン等のキレート剤、テトラサイクリン系抗生物質、キノロン系抗菌薬、セフジニル、経口鉄剤、ビスホスホネート、エルトロンボパグ、ドルテグラビル等が併用注意です。また、ポラプレジンク等の亜鉛含有医薬品との重複も確認が必要です。服用間隔は薬ごとに異なるため、一般記事の一律ルールで決めず、商品名と全サプリを医師・薬剤師に伝えます。妊娠・授乳中、小児、消化管疾患・吸収不良、腎・肝疾患、経腸・静脈栄養中、味覚異常や低亜鉛血症の治療中の人は、一般向け比較だけで摂取量を決めません。
利用上の注意: 味覚異常、皮膚症状、疲労等だけで亜鉛欠乏と判断しないでください。妊娠・授乳中、小児、消化管疾患・吸収不良、慢性下痢、腎・肝疾患、経腸・静脈栄養中、低亜鉛血症・ウィルソン病の治療中、貧血・血球減少・しびれ・歩行障害がある人、薬を常用する人は、一般向けの推奨量や商品比較だけで補給量・服用間隔を決めず、医師・管理栄養士・薬剤師の個別方針を確認してください。
亜鉛のよくある質問
成人は亜鉛を1日何mg摂ればよいですか?
日本人の食事摂取基準(2025年版)の推奨量は、成人男性9.0〜9.5mg/日、成人女性7.0〜8.0mg/日です。年齢で異なり、妊娠中期・後期は+2.0mg、授乳婦は+3.0mgです。治療量やサプリ1製品の目安ではありません。
味が分かりにくいのは亜鉛不足ですか?
亜鉛欠乏で味覚障害が起こることはありますが、味覚異常には口腔・鼻の状態、感染症、薬、加齢、疾患等さまざまな原因があります。症状だけでは判断できません。続く場合はサプリだけで対処せず、医療機関で原因を確認します。
植物性食品の亜鉛は吸収されませんか?
豆、ナッツ、全粒穀物にも亜鉛は含まれます。ただしフィチン酸塩が亜鉛と結合して吸収を下げることがあり、一般に動物性食品より利用率が低くなります。吸収は食事全体で変わるため、植物性食品が無意味ということではありません。
亜鉛サプリを摂りすぎるとどうなりますか?
悪心や胃部不快感等に加え、継続的な高用量摂取は銅の吸収を妨げ、銅欠乏、貧血・血球減少、神経障害につながることがあります。単体亜鉛、マルチ製品、医薬品等の1日量を合計し、自己判断で銅を追加しないでください。
栄養機能食品と病院の亜鉛薬は同じですか?
同じではありません。栄養機能食品は栄養補給に利用する自己認証の食品です。医療用亜鉛製剤は低亜鉛血症やウィルソン病等に使う処方箋医薬品で、検査・用量調整・銅欠乏や相互作用の管理を伴います。相互に代用しません。
参考文献
- [1]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2025年版)各論 ミネラル(微量ミネラル)・亜鉛(機能、必要量、過剰摂取、銅欠乏)
- [2]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント(亜鉛の年齢・性別別表)
- [3]厚生労働省 eJIM:亜鉛[医療者向け](NIH ODS資料の日本語情報、食品・吸収・欠乏・過剰・相互作用)
- [4]消費者庁:栄養機能食品について(制度概要、基準、自己認証)
- [5]消費者庁:知っていますか?栄養機能食品(現行亜鉛2.64〜15mg、機能文言・注意事項)
- [6]消費者庁:令和7年度 栄養機能食品に関する検討会 取りまとめ(亜鉛上限17mg・機能文言の改正案)
- [7]消費者庁:食品表示基準の一部改正に係る消費者委員会への諮問について(2026年7月17日)
- [8]PMDA:ノベルジン錠25mg・50mg/顆粒5% 添付文書(2026年4月6日、効能・用量・検査・相互作用・銅欠乏症)
- [9]文部科学省 食品成分データベース:ヘルプ(可食部100g当たり、単位、表示方法)
- [10]文部科学省 食品成分データベース:かき/養殖/生(亜鉛14.0mg/可食部100g)
- [11]文部科学省 食品成分データベース:和牛肉/もも/赤肉/生(亜鉛4.5mg/可食部100g)
- [12]文部科学省 食品成分データベース:カシューナッツ/フライ/味付け(亜鉛5.4mg/可食部100g)
- [13]文部科学省 食品成分データベース:糸引き納豆(亜鉛1.9mg/可食部100g)
- [14]大塚製薬 ネイチャーメイド公式:スーパーマルチビタミン&ミネラル(1粒当たり亜鉛6.0mg)
- [15]大塚製薬 ネイチャーメイド公式:亜鉛(1粒当たり亜鉛10.0mg、栄養機能食品)
- [16]DHC公式:ギャバ(GABA)30日分(1粒当たり亜鉛0.5mg)
- [17]ファンケル公式:亜鉛(1日2粒当たり亜鉛15.0mg、栄養機能表示)
- [18]ファンケル公式:マルチミネラル(1日6粒当たり亜鉛4.4mg、栄養機能表示)
- [19]オリヒロ公式:MOSTチュアブル 亜鉛(2粒当たり亜鉛4.0mg、栄養機能食品)
医師監修

千葉大学病院所属
形成・美容外科
順天堂大学医学部卒
最終監修日: 2026.07.18